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ミサ/レクイエムの式次第(入祭唱)


A-1-a. 入祭唱 ( Introitus )(固)(歌)[レクイエム:第1曲前半]

 司祭は入場してくるとすぐに祭壇に上がって「父と子と聖霊の御名によりてアーメン」といいながら、右手で額と胸に十字架の印をします。ついで司祭と会衆は、自らの罪を悔い改めるための祈りをささげます。
 ついで唱えられるのが「入祭唱」で、おもにその日のミサの意向を示すものです。ローマには七つの丘があり、そのそれぞれの上に聖堂がありました。ローマ教皇は七つの聖堂をひとつひとつ巡ってミサをささげましたが、その到着を迎えて歌った会衆の歌が「入祭唱」の起源です。
 礼拝中に歌われる歌はまず何よりも「詩篇」です。「詩篇」は聖書に収められた聖歌集で、「詩篇」を歌うことはキリスト教がユダヤ教から受け継いだ数千年の伝統です。
 けれども、旧約聖書(ユダヤ教)の「詩篇」を新約聖書(キリスト教)の教会の礼拝に用いるに当たってどのような意図で用いるのかを明らかにするため、「交唱 ( Antiphona )」が付け加えられました。「交唱」とは、おもに聖書から取られた短い句で、詩篇の前後に繰り返されます。古くは二組に分かれた聖歌隊が「交唱」と「詩篇」を交互に歌ったことから、「交唱」という名が付きました。
 「死者のためのミサ」の場合、「交唱」は「レクイエム」という名の由来ともなった、旧約聖書続編エズラ記(ラテン語)2:34 〜 35 に基づく「Requiem aeternam dona eis, Domine......(主よ、永遠の休息を彼らに与え給え…)」という句で開始されます。
 続く「詩篇」は新共同訳では 65:2 〜 3 の箇所が選ばれています。「Te decet hymnus Deus in Sion......(神への称賛をふさわしく歌うのは・・・)」
この詩篇は本来、収穫感謝祭の詩篇でしたが、ここでは「ad te omnis caro veniet(すべての肉なるものはあなたのもとに来ます)」という句を、すべての人は裁きのために神の前に出なければならないという意味で用いています。
 通常のミサでは、「詩篇」のあとに「栄唱(ドクソロジア:Gloria Patri...... )を唱えてから「交唱」が繰り返されますが、祝祭的な要素を避ける「死者のためのミサ」の場合は「栄唱」を省いてすぐに「交唱」へ戻ります。



「レクイエム第1曲前半:Requiem」
(交唱)主よ、永遠の安息を彼らに与え、絶えざる光を彼らのうえに照らし給え。

(詩篇)神への称賛をふさわしく歌うのはシオンにおいてである。

エルザレムでは主に生け贄を捧げる。

死すべきものはみな、主に帰る。

主よ、私の祈りを聞き入れ給え。

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