Go  back to HOME 京都の外国人客は未開拓?

 京都は、パリやローマと並ぶ国際観光都市。そんな印象がする歴史と伝統の”みやこ”、京都。しかし……

 京都の繁華街をよく歩く私だが、河原町でも四条でも、あまり外国人観光客らしい人々を見かけない。四半世紀前に過ごした学生時代の記憶でも、それほど見かけなかったのに、近年は、出会うチャンスが更に減っている。円高で海外からの観光客が減ったためなのだろうか?

 話を進める前に、以下の数字を、見てみよう。


各国の外国人客の受け入れ数
国 名1992 年1993 年1994 年
イタリア 50,089 千人 49,910 千人 51,814 千人
米 国 44,627 千人 45,779 千人 45,504 千人
カナダ 36,186 千人 36,100 千人 38,651 千人
ドイツ 15,147 千人 14,348 千人 14,494 千人
スイス 10,265 千人 9,901 千人 ---
日 本 3,583 千人 3,412 千人 3,373 千人
(出典:「数字で見る観光 1997」)

 この表は、代表的な国々を訪問した外国人の数の統計である。(なお、パリのあるフランスについては、別の統計であるが、年間6000万人以上の外国人旅行者が訪れている。)
 他の国々に比べると、如何にも、日本を訪れる人々は少ない。欧米人にとっては遠い国かもしれないが、ジェット運賃もかなり安くなっているのになかなか人数の差は埋まらない。逆に広がってさえいるようだ。
 さて、その少なめな訪日客の訪問先であるが、下の表を見ていただくと、2/3は東京へ行っているのに、京都には2割も訪れていない。事実、もう一つ下の表に示した京都市の統計では、京都にやってくる外国人客は、年間40万人以下である。この事実を見ては、パリやローマと比肩できる国際観光都市とは、とても言えない。

 私自身、自分が勝手に、「京都=国際観光都市」とイメージしていた不明を思い知った。

外国人客の訪問地 (1994 年)
順位 訪問地 訪問率
1 東 京 63.8 %
2 大 阪 24.8 %
3 京 都 17.2 %
4 名古屋 11.4 %
5 東京ディズニーランド 11.2 %
(出典:「数字で見る観光 1997」)


京都の外国人客数
宿泊客 宿泊しない客 合 計
1970 年 175,727 人 249,218 人 424,945 人
1975 年 122,679 人 102,242 人 224,921 人
1980 年 131,250 人 88,299 人 219,549 人
1985 年 248,258 人 99,683 人 347,941 人
1990 年 292,212 人 42,900 人 335,112 人
(出典:「京都市観光調査年報」)

 しかし、それでも、絶対数30万人を越える外国人客が、京都を訪れているのは事実である。1日平均ならば、千人近い人。これらの人を、もっと、商店街に呼ぶ手はないのだろうか?
 私の知り合いで、長期滞在している外国の人々と繁華街に遊びに行ったことが、何度かある。有名な京人形の老舗を訪れた時は、その美しさに目をみはっていたが、「こんな良い店があるとは、知りませんでした。」という彼らの感想を聞いたことが、頭にこびりついている。なるほど、日本人の自分では、有名な老舗と常識になっていても、外国人には、そのような情報さえもインプットされていないのかと、その時に、初めて知った。

 冷静になって考えてみると、京都の繁華街は、外国人客にとってわかりやすいところではないかもしれない。道路標識には、小さいローマ字で通りの名前は記されているが、それ以外に、外国人を意識した標識も案内所も店舗ディスプレイも四条にも河原町にもない。市販されている外国人向けの英語ガイドブックを手に取って見ても、観光名所の説明はあっても、店の紹介は無いか、あっても情報は不十分である。どんな伝統工芸品があって、その魅力や、値段の相場、売っている店の地図など、もっと教えてあげないと、潜在的なお客さんになる人も、全然無縁の存在になってしまう。

 個々の店にとっては、そのような宣伝をするための暇や資金の余裕は、ないかもしれない。また、どのような宣伝媒体を使えば効果的かも、見えないかもしれない。

 しかし、ここに、良い方法がある。
 インターネットである。
 京都の店で、既に、インターネット上のホームページを持っているところは、増えてきている。そこに、英語版のページを設け、扱っている商品について、いろいろわかりやすい説明を載せるのである。できれば、店の所在地の地図や、ホテル/観光名所からの来方も書いてあると判りやすい。初めて触れる品々の相場も知らない人々であるから、どんなグレードのものが、どれくらいするかも紹介しておくと、親切。

 未知の極東の国、日本。その魅力を常日頃から紹介しつづけ、「何かの機会で日本を訪れた際には、是非、京都の魅力を実地に味わって下さい。できれば、その足で、当店に是非お越し下さい。」ということを続けていくことが、潜在的顧客を増やしていくはずである。インターネットを使えば、遠いところの多数の人々に幅広く、そのような宣伝ができる。しかも、他の方法よりも、安価に。

 下の表のように、外国人客よりの収入は、やはり、沢山の人々が訪れる国々が多く得ている。イタリアは、日本の半分の人口で、7倍の稼ぎとなっている。もっと、日本の、京都の魅力を訴えていけば、もっともっと、観光収入が得られるはずなのに、取り逃がしているように、私には思える。

 我々、日本人が思っている以上に、外国には日本のことは知られていない。海外の新聞記事で、京都が載ることも少ない(京都市調査では、記事数で東京の1/140)。もっと、宣伝や情報発信をしていけば、必ず潜在顧客はどんどん掘り起こされてくるはず。「京都」というブランドの魅力には、1200年の歴史の後押しがあるのだから。

各国の旅行収入
国 名 旅行収入 (1994 年)
イタリア 23,754.3 百万ドル
米 国 60,406.0 百万ドル
カナダ 6,308.6 百万ドル
ドイツ 10,816.9 百万ドル
スイス 7,629.5 百万ドル
日 本 3,464.4 百万ドル
(出典:「数字で見る観光 1997」)

1998 年 3 月 31 日 ラ・プリマベーラ代表 村林 成


【あるフランス女性から聞いたエピソード】

あるフランス人が、近々、京都に留学する友人と話している。
 A:「あなたの行く京都って、コーヒー高いらしいわよ。」
 B:「で、いくらなの?」
 A:「1杯30フラン(=600円)。」
 B:「へーぇ、そんなにするの。やっぱり、円は強いからかなぁー。
    京都へ行ったら、コーヒー飲みに行くのも控えなくっちゃ。」
(どうやら、Aさん、ホテルか、どっかでの値段を知って、そのまま話しているようだ。
 まぁ、外国人観光客は、そんなに高くない普通の日本の喫茶店は経験しないから仕方ない?
 まだまだ、京都の繁華街は縁遠い証左?)

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