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![]() ウフィッツィ美術館 (click here for movie: 4MB) |
さて、今回のフィレンツェ訪問の最大の目 的、ボッティチェリの "La Primavera" は、 フィレンツェ観光客の一番御目当ての美術館 ウフィッツィ美術館に飾られている。ウフィ ッツィとは、英語で言えばオフィスのこと。 メディチ家の事務局(フィレンツェ公国の行 政局)として1565年に完成した建物の3 階に、メディチ家の収集品の保管が16世紀 後半より始まったのが起源。バザーリの設計 した建物は、左の写真のような素朴なデザイ ンのものである。 |
ウフィッツィ美術館には、ダ・ヴィンチの「受胎告知」、ミケランジェロの「聖家族」、ラファエロの「ひわの聖母」などの名画の他、13世紀から18世紀までの著名な絵が飾られている。しかし、ボッティチェリの扱いは別格で、ボッティチェリ一人の作品のための展示室が設けられている。
![]() 展示されているLa Primavera (click here for movie: 3.2MB) |
"La Primavera"(春)は、ボッティチェリが一 番油ののっていた1482-83 年に製作されてい る。203cm X 314cm のサイズで、思っていた より、実物はかなり大きかった。絵の保護のた めか、薄青のガラスが全面に掛けられていたの が少々味消しではあったが、初めて実物を見た 喜びは息を呑むような感じと言えばよいであろ うか。 |
![]() 絵筆の毛一本までの繊細さが (画の左上部分の拡大) |
"La Primavera"(春)の絵は有名なので、必ず 美術書にも載っている。しかし、実物は、その イメージよりずっと深い色と繊細さを持ってい た。人物の着衣の糸の一本一本、草木の葉の葉 脈まで描き込まれている。203cm X 314cm の大きさでこの繊細さであるので、普通の印刷 本のサイズなら、数字の上では10ミクロン程度 まで表現しないと、この繊細さは表わせない。 しかし、例えそのような印刷技術があったとし ても、細か過ぎて、普通の人間ならばルーペな しで識別することもできないであろう。つまり この絵が本来持っている繊細な美しさは本物を 見ない限り味わうことはできない。 |
![]() ヴィーナスの誕生 |
"La nascita di Venere"(ヴィーナスの誕生) も有名で、日本では、"La Primavera"(春) よりも人気があるかもしれない。しかし、絵の サイズは、172.5cm X 278.5cmで、後者に比 べやや小さい。絵そのものも、"La Primavera" (春)ほど細かいところまで描き込まれていな いのが、実物を見て判った。もし日本で人気が あるとしたら、その理由は、構図のわかりやす さと、ヴィーナスの表情の優美さにあると思わ れる。しかし、街で見た絵葉書やポスターには "La Primavera"(春)が圧倒的に採用されて おりこちらのほうが、フィレンツェの顔になっ ていた。両者を相撲番付に例えると、 "La Primavera"(春)が横綱、 "La nascita di Venere"(ヴィーナスの誕生) は大関か関脇といったところが、実物を見た私 の感想である。しかし、いずれも、フィレン ツェの街で実際にこの目で見ることができ、私 は非常に感銘を受けた。 |
(1996.11.13 初版、1998.02.21 改訂)