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【三人三様の女形】


 神霊矢口の渡

   頓兵衛娘お舟 福 助
   渡し守頓兵衛 段四郎

 私はまだ児太郎と名のっていた頃から福助さんが大好きでした。瑞々しい美しさにあふれ、愛らしく、しかもおきゃんに、少女と乙女の微妙な瞬間を舞台で表現していた福助さんがとても好きでした。児太郎時代で特に心に残る舞台の一つに忠臣蔵七段目祇園一力茶屋の場のおかるがあります。遊女姿のなまめかしさは言うまでもなく、時代的なおおらか色気や純粋さが何とも心地よく表現されていました。その後、何度か若手の有望だと言われる方々のおかるを見ましたが、私にとってはやはり福助さんが一番。「ひいきというのは、こういうものだ。」と調子の良い時も悪い時もひっくるめて、彼を大切に見てゆこうと思っています。

 今回のお舟も期待を裏切らず、彼の持ち味を充分に楽しませてくれました。高揚した場面でセリフがキンと高くなるのもかえってこちらがのせられてしまいます。

 段四郎の徹底した悪役ぶりは、さすがに迫力満点。舞台となる頓兵衛の屋敷を下手へ半分回し、上手から頓兵衛が舟で現れる場面では歌舞伎の舞台使いのうまさに感心させられる所です。

p.2 に続く