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 長唄「鷺娘」

   鷺の精 玉三郎

 実は昨年九月に人間国宝の常盤津一巴太夫さんの常盤津の会に賛助出演された玉三郎さんの「千代の友鶴」を見ました。玉三郎さんならではの、ほとんど白といっても良い衣装。出の瞬間から超満員の観客を引き付けて話さない魅力。

 この人の舞いは、この人以外には舞えない。

 渡辺保氏が、玉三郎自身が作品であると記してある本を読んだことがありますが、この時には、まさにこの空間が彼のために準備され、その同一空間で彼の芸に接することの出来た喜びに、最高の幸せを感じました。

 今回の「鷺娘」に関して言えば、最高の出来とは言えません。しかし、実は舞台芸術のおもしろさとは、ここにあるのです。毎回百点満点を出せるはずはなく、観客は今日の出来を鑑賞に来るのです。良い出来の時は、やはり自分のひいきの役者はさすがだとほくそ笑み、あまり感心できない場合は、次の舞台でどう変化しているかを期待する。つまり、ファンであり続けることを楽しみ、役者の成長と共に観客として成長してゆく。このことが、一番大切ではないかと思えるのです。次の機会には、息をのむような「鷺娘」を期待しましょう。

 これは、私の素直な感想を書いたものです。たしかに専門家的な見方はしていないかもしれませんが、古典芸能であることにあまりとらわれず、自分流で見ることをお薦めします。その中で、つまらないものは、つまらないと、良いものは、良かったと評してはどうでしょうか。実は私自身は、三才の頃から日本舞踊を踊っています。芸歴を書いてしまえば、年齢もわかりますが、実に四十二年間、踊っていることになります。時折、初めて日本舞踊を見たとおっしゃる方の寸評が、実に的を得ていることがあります。そして、そういう方々の生き方は、必ずと言ってよいほど、様々なものに興味をもたれ、エネルギッシュなものなのです。芸術評に間違いはありえないものかも知れません。見る者、感じる者の素直な表現であれば良いわけですから。
 できれば、自分流の見方も数多く見る内に、レベルアップしてゆけば言うことなしですので、見る者も見られる者も、共に成長があってこそ、発表の意義があるというものではないでしょうか。

(や)


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(1998.02.27 初版)


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