p.2
日吉台コンサートの特徴は、曲の演奏の前に、各楽章のテーマを演奏して紹介してくれるところと、プログラムにやや詳しい解説のほかに、各楽章について
第二楽章 メヌエット(踊りの一形式) 4分の3拍子
などと説明をつけてくれているところ。今回、岡田氏は、音楽になじみの無い方への配慮で、「8分の6拍子とは」などの説明もされていた。

第1ステージは、モーツァルトの弦楽四重奏曲「狩」。前ページでマウスクリックされ、第1楽章のテーマをお聞きになったかたは、どこかで聞いたことのあるメロディーと思われたかもしれない。モーツァルト 28 歳のときの作品で、明るく幸せなイメージのする曲である。
冒頭から、岡田氏のヴァイオリンの美しいメロディーラインに合せて、各演奏者は流れるように弾いていく。会場の聴衆も、次第に曲の中に浸っていき、第三楽章に入ると、会場も水を打ったような雰囲気の中、曲が進行していく。そして、その雰囲気に応えてパッセージをひとつひとつ紡ぎ出していく演奏者の面々。曲の旋律に聴き入っていると、感情が自分の身体を離れて、会場にただよっていくような気分になっていく。この雰囲気は、私自身、実際の生演奏でしか、味わえない。よく、話や本で、「お客さんと一緒に演奏が作られる」と言われているのは、まさに、このような状態。そんな幸せな気分のうちに、第1ステージは、終了した。

第2ステージは、チャイコフスキーの弦楽六重奏曲「フィレンツェの想い出」。私自身も初めて聴くこの曲は、チャイコフスキー 50 歳の時に、バレエ組曲「眠れる森の美女」初演後に訪れたイタリア、フィレンツェの想い出を翌年作曲したものだそうである。ヴァイオリンの他、ヴィオラとチェロも、2人ずつとした六重奏で演じられる。40 分を越す大曲で、今回の演奏会のメインである。
このステージは、第1ステージ以上に各演奏者の巧みさが感じられ、日頃、大阪フィルで一緒に演奏されていることも、アンサンブルの良さの一因とも感じられた。
曲自体は、ロシアの貴族的雰囲気と、イタリアルネサンスの輝きのようなものが全体として終始流れている。第二楽章の音色などは、バロックのオルガン曲か、ヴィオラ・デ・ガンバのような古楽器の感じさえただよってきた。そして、各パートの音の重なりの厚みは、ロシア的なものへとつながっていく。クレムリン宮殿の金色の輝きが、フィレンツェのアルノ河に沈みゆく黄金の陽光とだぶった雰囲気で、メロディーが心にしみわたった。
アンコールも、結局、この第二楽章を、もう一度、ということになったが、何回聴いても、良い印象の曲である。このような曲との出会いを演出してくださった、岡田氏と演奏メンバーの方々に、お礼を申し述べたい。
(本ページ背景は、フィレンツェのミケランジェロ広場よりの大聖堂の眺め)

今回の来聴者は、50名ほど、年配の方々と女性の方々が中心であった。
なお、演奏が終わった後、岡田氏に少し話を伺うと、入場料はいただいているものの、現実には、結構の持ち出しとのこと。私も音楽活動には、縁があるが、この辺はなかなか難しい問題でもある。このような素晴らしい生演奏との出会いが、音楽家の方々の誠意で増えてきたことを、私達ももう一度認識し、この輪を拡げていきたいものである。
ちなみに、次回の日吉台コンサートは、9月27日(日)午後3時。曲目は、ベートーヴェンの七重奏曲他とのこと。大津市近辺で、機会のある方は、是非、来聴されては?
(し)
(1998.06.23 初版)