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 演奏会のあった日は、初夏のような陽気。その中、続々と聴衆が来場し、席数500余りの会場は、ほとんど開演前には埋め尽くされた。演奏の間も立見で聴く観客も少なくはないという盛況であった。


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第1ステージ

 最初の演奏は、ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調。出だしから、豊かな中音領域の音が、観衆を包み込み、心がほぐされる。京都チェンバーオーケストラメンバーと、チェンバロの野口による、たゆまないトーンの流れは、柔らかい響きを紡ぎだし、後に続くステージへの期待を抱かせるものであった。ちなみに、11 人の演奏者は、全員、ソロとして別々のパートを受け持つという形であった。

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第2ステージ---ラリュー/野口/井上

 第2ステージで、本日のメインゲスト奏者マクサンス・ラリューが登場。ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調の出だしは、第3番より、軽快な音の動きとして感じられる。そのような曲の雰囲気を、フルートと、ヴァイオリンとが掛け合いながら演じていく。ヴァイオリン・ソロの井上は、確かな演奏であったが、少し控えめだったような気もした。
 野口は、このステージで、チェンバロ演奏の美しさを、この曲で見事に示していた。第1楽章後半でのソロで、鮮やかに、細かい音の連続を弾きこなし、華麗という言葉がぴったりのパフォーマンスであった。

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第3ステージ---箏の福原(ステージ左)

 休憩後の第3ステージは、京都チェンバーオーケストラ唯一、邦楽奏者として参加している福原が、バッハの小フーガ ト短調に箏で挑戦。西洋音階にチューニングした箏で、バッハのメロディーを刻んでいく。試みとして大変面白いものであったが、やはり楽器としての適性からすると、演奏上やや苦しい場面もあったのは、確か。
 しかし、このように邦楽と洋楽が、互いの関係を模索しながら、新たな音楽を創っていくことは、日本のこれからの音楽活動にとって、大切なことではないだろうか。ちょうど、その頃、私自身が、小泉文夫の日本音楽の著作を読んでいたこと、最近、邦楽の演奏を何回も聴いて、関心があったことも、そう感じた理由である。
 福原は、小フーガを終えると、アンコールとして、箏を取り替えて、邦楽演奏で、その巧みさを披露してくれた。

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第4ステージ---鷲山/白石/ラリュー

 最後のステージは、ブランデンブルク協奏曲 第4番。フルートは、マクサンス・ラリューと白石のデュオ。そこに、京都チェンバーオーケストラのコンサートミストレスの鷲山がヴァイオリンソロで競演。本日の中で、一番の聴きごたえのあるステージであった。
 フルートのデュオは、しっとりとした音の重なり合いで、良い響きを出し、場面によっては、リコーダーのような音色をも醸し出していた。一方、鷲山は、第1、第3楽章の、非常に速いパッセージを見事にこなし、そしてまた、フルートとの掛け合いでは、相手をよく観て落ち着いた演奏をするというパフォーマンスぶりが注目された。

 コンサート全体を聴いて、柔らかい音色と、繊細な響きが、京都チェンバーオーケストラの特徴という印象がした。プログラムにはさんであった、「京都チェンバーオーケストラニュース」を見ると、この5月に9回も演奏会を開く予定が記されていた。そこからは、室内楽に対するひたむきさと、地元の人々に音楽を分かち合おうとするメンバーの皆さんの気持ちを素直に感じることができた。今後も、京都チェンバーオーケストラの演奏会に行くのが楽しみになりそうである。立錐の余地のないほど多く駆け付けた、ファンの方々も同様の気持ちではないかと思いながら、私も、会場を後にした。

(なお、本文中、演奏者の方々の敬称は、略させていただきました。)

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(1998.05.06 初版)


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