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Viviane Hagner
ベルリン芸術大学の
ヴィヴィアン・ハーグナーさん

Monika Gmeiner
ウィーン国立音楽大学の
モニカ・グマイナーさん

Ingeborg Fimreite
ノルウェー王立音楽院の
インゲボルグ・フィムライテさん


 私には、時々、若手の演奏家のコンサートやプロ演奏家が指導するマスタークラスを聴いたりする機会があります。そのような場では、一般のCD/放送での有名な方々の演奏とは異なり、演奏者の若々しさが随所に見られます。しかし、それが逆に本当の音楽とは何かを、私に教えてくれているような気がしています。今回の京都・国際音楽学生フェスティバルに出演された方々も、そのように、音楽とは何かを強く私に感じさせてくれました。私自身も出演された皆さんには親近感がわき、それは長く余韻となって心に残っています。


 このフェスティバルに出場することは参加者として光栄なことで、参加各音楽学校では多数の応募者の中から代表を選抜することにも苦労されたりしているそうです。それだけあって、どの演奏者もテクニック的には、水準以上のレベルでした。コンクールで何回も優勝/入賞されたり、ソリストの活動を始められていたり、実力は既に充分の皆さんですから、技術的に問題のないのは当然かもしれませんが。
 一方、「若い」という観点からの今後の課題として感じたのは、演奏された皆さんは今現在はテクニックの習得を終えた段階であって、その人の持ち味を作り出していくのと、楽器を使って感情を自在に表現する術を身に着けていくのは、これからになるだろうということでした。しかし、変に技巧に走って作られた演奏でなかっただけ、非常に素直に聴ける演奏ばかりであったことは確かです。

 音楽についての説明はなかなか難しいので、多くの日本人が好きな野球に例えると判りやすいかもしれません。その例えでいくと、このフェスティバルは、甲子園の高校野球のような印象です。まだ、本格的プロになる前の若人達が一同に集まって競演するのです。プロのレベルには、まだ足らないところもあるでしょうが、プロのような妥協もなく、全力で自己の最高のものを出し切ろうという精神は似ています。中には、プロとして即戦力になるような人もいるでしょう。また、高校球児が、その後のプロの生活を通じて、自分の野球のスタイルを作っていったり、対戦相手との駆け引きなども学んでいったりするところにも、若手演奏家の姿に合い通じる部分を感じます。


 今回の優秀な若手演奏家の中でも、三人のヴァイオリニストのことが、私には印象深く残っています。ベルリン芸術大学のヴィヴィアン・ハーグナーさんは伸びのある音色に特長があり、ウィーン国立音楽大学のモニカ・グマイナーさんは安定感があり全般的に完成されているという印象でした。ノルウェー王立音楽院のインゲボルグ・フィムライテさんの演奏には、豊かさや力強さを感じました。前述のように、野球に例えると、ちょうど、グマイナーさんは、即一軍登録できそうな実力を既に備えているヴァイオリニストです。一方、良いものをキラリと光らせていて、将来的に更に大きくなることが期待できる高校球児に例えられるのは、ハーグナーさんでしょうか。彼女は、今の殻を破って、更に大器となっていくような予感がしました。また、他人には真似できない独特の良さを持っている野球選手に例えられるのが、フィムライテさんです。彼女は、今回聴いた北欧系の曲などにおいて、他の演奏家ではできないような味を出していたと思いました。


 公開練習も含めると6日間、観光にも出ず、一生懸命に曲の練習に励んだ参加演奏者の皆さんでした。フェスティバル最終日恒例の合同演奏のフィナーレでは、出演者の方々は、個人の責任の重い各日の演奏とは一転して、リラックスしたパフォーマンスを披露してくれました。アンコールの拍手を受ける間にも、ステージの上で、共に集って競演した国の違う仲間と喜びをわかちあっている姿が見られました。もちろん、フェスティバルを通じて毎日会場を埋めた聴衆も、この共感の渦の中に浸っていたのです。それは、祭や運動会、あるいはオリンピックで、我々が良く感じる喜びと同じです。「人間って、好いものだ」そういう感激が、会場のアルティを埋め尽くしました。まさに、フェスティバルという名前がふさわしいエンディングでした。


 最終日のステージが終わったロビーで、日本の若い聴衆に、「昨日の私の演奏、聴かれましたか?」と尋ねていたフィムライテさん。同じドイツ語圏ということで、ハーグナーさんとグマイナーさんは、ドイツ/オーストリアの仲間と一緒に、会場前の広場で談笑していましたが、その後、ホテルかどこかで共に祝杯を上げたのでしょうか? いつかまた、どこかで、この三人や他の演奏者の方々ときっと出会うような予感がしています。それは、CDや放送を通じてかもしれませんし、プロとしてのステージ演奏を実際見ることになるのかもしれません。そんな期待と共に、来年のフェスティバルが心待ちになる、そんな幸せな京都・国際音楽学生フェスティバル'98 でした。

(1998.07.09 初版 )


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