第2部 Symbolum Nicenum | |
2-4. Et incarnatus est | |
【編成】 | 5部合唱、 ヴァイオリン I & II(ほとんど斉奏)、通奏低音 |
【調性、拍子】 | ロ短調、3/4 |
【作曲経緯】 | 自筆総譜の筆跡等からオリジナル、書き下ろしと判断されている。 |
【評価等】 | 以下の3曲が〈信経〉の核心をなす。処女懐胎によって人の子となったイエスの神秘について語るとき、バッハの音楽はロ短調の霊妙な響きに戻り、人への降下を象徴する下行3和音の主題(ロ短調で、ラ−ミ−ド−ラ)が用いられる。ヴァイオリンの伴奏音型も、キリストを象徴するいわゆる「十字架音型」をかたどる。こうして音楽と神学は神秘的な合一を遂げるのである。バッハはこの第2部の作曲に際して、このロ短調の合唱曲を後から追加した。そのことにより次の「クルチフィクス」が全9曲の中心に位置し、しかもイエスの「受肉と受難」が音楽的に意味深く強調されることとなったのである。この曲のシンプルな和声スタイルは、ペルゴレージの《スターバト・マーテル》から影響を受けたとも言われている。 シヴァイツァーは、 「天の聖霊はこの世界の上を飛び回って、自分のやろるべきものを探し求める。‘Et homo factus est’のところで聖霊は飛行をやめて、下に下る。この瞬間にこのモティーフは低音に現れて、自らいやしくして肉体をとったことが表出せられる。」 と述べている。 |
【筆者注】 | この曲も〈Gloria〉の〈Qui tollis〉と同様に良く似た旋律が各パートで模倣されていくが、よく見るとそれぞれ微妙に異なっている。冒頭のアルトは4度−長3度−短3度、次のソプラノ II は短3度−長3度−短3度、ソプラノ I は短3度−短3度−短3度、テノールが短3度−長3度−長3度、最後のバスが4度−長3度−減3度とすべて違う旋律となっている。 |