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「私も、長年、紙でいろんなものを作ってきましたが、紙にはそれなりの良さがあるんですね。軽くて加工がしやすいので、ちょっとしたものの試作も簡単にできます。もしこれが木や鉄だったら、アイデアを形にするにも、それなりの時間と手間がかかります。」
紙の話を始めると、その知識は止まるところを知らない。長いつきあいの結果、今では、ちょっと触っただけで、その紙の質(業界では紙の厚さも重さ換算で何キロと表現されている)から、印刷の手法まで言い当てることができる技を松原さんは、持っている。例えば、イタリアで手に入れたアート紙を手土産に訪れた時は、「......これは、日本では、もう珍しくなった活版印刷で刷ってありますよ。......」という答えが返ってきた。ルーペを借りて詳しく印刷の様子を見ると、確かに、手近にある日本の印刷物とは違うインクのつき方をしている。という具合である。
松原さんの作品は、心和むものが多い。ここ数年のつきあいの中で実地に体験したものをいくつか紹介すると。
一つは、白い壁に赤い屋根の地中海的雰囲気のハウスをあしらったパッケージ。これを、いくつか並べると、スペインか南仏の家並みができあがる。ショウウィンドゥ にもふさわしい。
また、赤いりんご形で、へたの緑がちょうど紙製の結び目になっているものも記憶に鮮明だ。このパッケージを使って、妻より単身赴任中の私にチョコレートが贈られたが、街中の他のどこのチョコよりもいいなぁと、思わずうれしくなってしまった。
最近のヒット作は、京都のお香の店のためにデザインしたパッケージ。匂袋を入れる黒い小箱を半透明な樹脂の帯がくるんでいる。箱は単純な四角でなく、丸みをもった形になっており、これが和の心の表現と機能面での使いやすさにつながっている。
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この電話機型のパッケージも、 松原さんの最近のお気に入り。 受話器のカールコードと文字盤を 見ていると、ついこれで電話をか けたくなってしまう。 |
「日本人も、プレゼントなどで、ラッピングをしたりするように、近年なってきましたが、ヨーロッパなどに比べると、まだこれからという段階でしょうか。たとえば、このカタログを見てください。イタリアのこのメーカーは、パッケージの専業で、こんなに、いろんなものを作っていますよ。」そう言って、見せてくれたカタログには、アンブレラの形、帽子の形、というように面白いのもあれば、オーソドックスに四角あるいは円を基本型にしたデザインが......という具合に開いたページの両方に何十と載っている。ページをめくると、そこには、違った色合いや違ったコンセプトのシリーズが、紙面一杯広がっている。いったい、どれだけのデザインのパッケージがレディメイドで用意されているのか、と思いを馳せた途端に、松原さんの言わんとすることが理解できた。
「......それだけ、あちらの人は贈り物をする時にも、どんなパッケージを使って相手を喜ばそうと考えているか、わかるでしょう。......これは、もう文化という感じで(パッケージの製作と利用が)あちらではできあがっているんですね。......」
そう語る松原さんの目には既に、本場イタリアの目の肥えた人々にも、自分の作品を使ってもらいたいという輝きが満ちていた。
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