トップページ > モーツァルト研究 > ミサとレクイエムの構成 > ミサ/レクイエムの式次第 平和の賛歌 (Agnus dei) | |
ミサ/レクイエムの式次第 |
![]() |
B-3-b. 平和の賛歌 (Agnus dei) (通)(歌) 「ミサ曲第6曲:Agnus dei」 「レクイエム第12曲前半:Agnus Dei」 再び司祭と会衆の間に「主は皆さんと共に」の挨拶があった後で歌われるのが「Agnus Dei(神の子羊)」です。 生け贄のパンとして、今日ではホスチアと呼ばれる小さなせんべいのようなものが用いられていますが、古代では一般の人々が日常食べているのと同じ普通のパンが用いられました。そしてそれを参加者全員が分け合って食べるのですから、人数分に切り分けるのも結構時間が掛かりましたから、グレゴリウスより約百年後の教皇セルギウス一世(在位687〜701)は、その間に「Agnu Dei」を聖歌を歌うことを命じました。テクストの最初の呼びかけ「神の子羊」は、ヨハネ1:36から取られており、キリストが「過ぎ越し」の祭りにささげられる、傷もシミもない子羊としてその身をささげ、人々のために平和と和解の供え物となられたことを歌います。 ここで「平和」が歌われるのは、古い時代にはこれから一つのパンを分け合って食べ、一つの杯から共に飲む、つまり日本的に言えば「同じ釜の飯を喰う」共同体の一致と、交わり(それはまた神の国における最終的平和と一致の先取りでもあります)を祝うためにここで一同が互いに「平和の接吻」を交わしたからです。(この習慣はミサの共同体性が見失われて個人主義的に理解されるようにつれ、行われなくなりました。) けれども、「死者のためのミサ」では、この平和の祈りの部分が死者の安息のための祈り「Dona eis requiem」に変えられているため、「Agnus Dei」本来の意味は幾分不明確なものになっています。 「ミサ曲第6曲:Agnus dei」 「レクイエム第12曲前半:Agnus Dei」 |