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バッハ及びロ短調ミサ曲の
 参考文献(その2)


 皆さんに励まされて(おだてられて?)バッハ講座を続けてきましたが、お陰さまで15回を過ぎました。
 前にも一度参考文献をご紹介したことがあるのですが、この辺でもう一度、前回紹介しなかった文献を紹介して、皆さんご自身でバッハについてもっと調べてみようと思われた時の参考にしていただきたいと思います。以下に示したものは、今までのバッハ講座を書くに当たって実際に何らかの参考にした文献です。
 以下の紹介は順不同です。

(1)「バッハ・ロ短調ミサ曲」 ヘルムート・リリング著、1979年、(株)シンフォニア
 著者のヘルムート・リリングは現代を代表するバッハ演奏家の一人。シュトゥットガルトのゲヒンガー・カントライとバッハ・コレギウムを率いてバッハ作品を中心に演奏活動を続けており、レコード、CDにも多数の録音をしている。バッハの教会カンタータ全曲の録音を完成させた最初の指揮者でもある。
 本書は「ロ短調ミサ曲」の個々の曲について、いわゆる曲の解釈、演奏上の注意点、表現上のポイント等を詳しく解説している。引用している楽譜は我々が用いているベーレンライター版であり、小節番号などは一致しているので楽譜片手に読んで行くのに好都合である。
 本書にも楽譜は多数引用されているが、じっくり読もうと思う人は、オーケストラスコアを買った方が面白い。
(2)「大作曲家 バッハ」 マルティン・ゲック著、1995年、(株)音楽の友社
 著者はドイツの音楽学者。他にもバッハ関係の著書があるが、大作のため、筆者はまだ買えていない。
 本書は、大作曲家シリーズの1巻で、バッハの生涯を年を追って記した言わば通史である。日本人の書いたものでは、よく引用している磯山雅氏のものなどもあるが、やはり日本人と外国人の見方の相違が随所に見られ、理解が偏らないためにも有益であった。
(3) 「基本はバッハ」 ハーバート・フッパーバーグ、1992年、(株)音楽の友社
 バッハ生誕300年を記念して出版されたもの。著者はアメリカの音楽評論家。
 本書の構成は、バッハに関する多面的な切り口で、各々のテーマが2〜3ページで完結しており、関心のあることだけ拾い読みするのにも適している。テーマの例としては、"バッハ語録"、"バッハの職歴"、"恋するバッハ"、"二人の妻と二十人の子供"等、どちらかと言えば音楽よりは人物、生活、性格等が中心になっている。また、バッハ作品の演奏の歴史や現代の演奏家等の節も設けられている。
(4)「バッハの音符たち」 池辺晋一郎著、2000年、(株)音楽の友社
 著者は現代の日本を代表する作曲家の一人。NHK教育テレビで毎週日曜日の午後9時からの番組に出演しているのでご存じの方も多いはず。一度関西合唱コンクールの審査員で来阪した際に講評も聞いたが駄洒落の好きなおじさんで、この本もそういう乗りが垣間見られる。
 本書は雑誌「音楽の友」に連載されたものを纏めたもの。バッハの曲が素晴らしく聞こえる仕掛けを作曲家ならではの観察力で解き明かし、楽譜を示しながら解説している。なるほどこういう仕掛けがあるのかと面白い発見ができる。ただ、器楽曲、特に独奏曲が中心になっており、声楽曲としては"コーヒー・カンタータ"、"シュメッリ讃美歌集"、"コラール「主よ、人の望みの喜びよ」"の3章だけである。
 なお、最近、姉妹編として「モーツァルトの音符たち」も出ている。
(5)「バッハからの贈りもの」 鈴木雅明・加藤浩子(対談)、2002年、(株)春秋社
 鈴木雅明氏は現在バッハ・コレギウム・ジャパン(略称BCJ)を率いて精力的にバッハの教会音楽に取り組んでおり、"ヨハネ受難曲"等の大曲の他、教会カンタータの録音を連続的に続けている。また加藤浩子氏は音楽学者で、第1回の参考文献で紹介した「バッハへの旅」の著者。
 本書は対談形式で、鈴木雅明氏のバッハの音楽に対する考え方を引き出すとともに、演奏における苦労話なども語られており、実際に演奏に挑むものとして面白く読める。
 特に最後に「BCJの音づくり」という章があり、その中で"ロ短調ミサ曲"のうち‘クレド’のリハーサル風景が紹介されている。出だしでいきなりテノールが音が取れないとか、歌う方が指揮者を見てくれないとか、プロ集団でもこういう苦労をしているのだと安心させてくれるようなことがかかれている。これも楽譜が随所に入っており、指揮者がどのフレーズを強調しようとしているかなどもわかるように工夫されている。一度読んで見られることをお勧めする。
(6)「バッハの息子達」 久保田慶一著、1987年、(株)音楽の友社(音楽選書)
 バッハはマリア・バーバラとの間に7人、アンナ・マグダレーナとの間に13人の子供をもうけた子沢山であった。そのうち男子が11人、そのうちの5人は夭逝しているので6人が成人したことになる。
 本書は、バッハの家庭について概説した後、音楽家として大成したヴルヘルム・フリーデマン・バッハ、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ、ヨハン・クリスティアン・バッハ、ヨハン・クリストフ・バッハの4人について活動の様子を纏めたものである。
(7)「バッハとの対話」 小林義武著、2002年、小学館
 バッハ講座でも何度か引用した小林義武の最近の著作。小林義武氏は現在日本を代表するバッハ研究家の一人で、ゲッティンゲンのバッハ研究所にも勤務した経験を持つ。
 本書はバッハに関する研究の最近の状況についてまとめたもので、バッハの素顔といった人物像、バッハが用いた五線紙に関する研究、"ブランデンブルグ協奏曲"の成立状況や、オルガン音楽やカンタータの継承過程、さらにはバッハ作品に関する挿話などについて述べられている。"ロ短調ミサ曲"に関しては「バッハとカトリック音楽」という副題で「プロテスタントとカトリックの融合を目指したエキュメニカルな音楽」と述べている。
(8)「バッハ事典」 磯山雅他編、1996年、東京書籍
 比較的最近出版されたもの。わが国では一番纏まった参考資料。
 全作品の解説が中心になっているが、バッハの所蔵楽譜・図書リスト、当時の音楽事情、バッハ研究史、バッハに関する参考文献、バッハと関係する人物の紹介、バッハの詳細な年譜等もあわせて記載されている。ただし、楽曲解説に関して譜例は付いていない。
 余談ではあるが、著名な作曲家の同様なシリーズが順次発刊されている。
(9)「名曲解説ライブラリー J. S. バッハ」 音楽の友社編、1993年、(株)音楽の友
 昭和30年代の半ばから、「名曲解説全集」というシリーズが発行されていたが、こちらはジャンル別に整理されていた。同じような解説内容を作曲家別に再編集して内容を補
ったシリーズの1巻。
 全曲が取り上げられているわけではないが、バッハの音楽を鑑賞するのに格好の手引き。楽譜も細切れではあるが引用されている。曲の選定がバッハの業績に比べると器楽曲に偏っているように思われる。特に教会カンタータについてはかなり物足りなさを感じる。
(10)「ブラヴォー・セバスティアン」 アンドレーア・フローヴァ、1996年、哲学書房
 筆者が目にした中では唯一のバッハを題材とした小説。
 著者はイタリア生まれの物理学者。本書は小説としての処女作。
 「ボーイソプラノ」、「初体験」、「獄中からの手紙」、「和声と未完成」、「カンタータと確執」、「楽聖バッハ」等々10章にわけて、バッハの生涯に関して比較的有名な出来事を面白い読み物にして紹介している。
 小説であるから真偽のほどは保証の限りではないが、それを承知で読めばバッハの人物に対するイメージを深めるのには役立つ。
(11)「バッハの音楽的宇宙」 大村美恵子著、1994年、丸善ライブラリー
 著者は「東京バッハ合唱団」を創って30年間以上バッハの作品を演奏してきた女性。
 内容は主な教会カンタータの紹介で、「歴史」、「生活」、「国家・政治」、「宗教」、の5テーマに分けて合計67曲の教会カンタータ、"マタイ受難曲"、"ヨハネ受難曲"、"クリスマスオラトリオ"そして"ロ短調ミサ曲"が紹介されている。新書版にこれだけの曲数が入っているのでそれぞれの記述はごく短いが、巻末に比較的詳しい年表、子供のリストが付いている。
(12)「誰も言わなかった『大演奏家バッハ』鑑賞法」 金澤正剛監修、2000年、講談社
 一見、奇をてらったような題名になっているが、監修者はれっきとしたヨーロッパ中世音楽の研究家。
 3章に分かれており、第1章は「J.S.バッハ『不滅』の秘密」というテーマで、フルートの工藤重典、ヴァイオリンの千住真理子、チェロの鈴木秀美の他、雅楽の東儀秀樹等の演奏家から見たバッハの魅力が語られている。
 第2章は「J.S.バッハ7番勝負」というネーミングで、ヘンデル、ヴィヴァルディ、ラモー等、バッハの同時代人と比較してバッハ音楽の特徴を解説している。
 第3章は「受難曲」で、ドイツ文学者の小塩節氏が「マタイ受難曲」について、先にも登場した鈴木雅明氏が「ヨハネ受難曲」について書いている。
(13)「『古楽器』よさらば」 鈴木秀美著、2000年、(株)音楽の友社
 著者の鈴木秀美氏はチェリストで、何度か登場した指揮者の鈴木雅明氏の実弟。兄のバッハ・コレギウム・ジャパンでもチェロを弾いている他、ヨーロッパの代表的なバロックオーケストラでも弾いている。
 この本はコンサートプログラムの解説、CD解説、セミナーの公演内容等を纏めたもの。
 題名からいわゆる『古楽器』を使わない方向を志向しているとも誤解を招きかねないが、むしろ逆で、現在ともすると、特に弦楽器の場合、19世紀の古典派から初期ロマン派の時期にかけて確立された形式の楽器を「モダン」、それ以前の楽器を「古楽器」と読んでいることに対して疑義を唱えているもので、書かれた当時に「モダン」であった楽器は現在の我々にとっても「モダン」であり、各時代の音楽を取り出して、専門料理店のように味わおうとすることは前世紀までなかったことであり、その様式感を高めようとする考え方は最も現代的でそのための道具が「オリジナル楽器」であるという主張である。
 バッハの参考文献に取り上げたのは、以上のような「オリジナル楽器」による演奏の考え方の他、具体例としてバッハの無伴奏チェロ組曲が取り上げられていることや「バロック音楽は語る音楽である」等、バロック音楽を演奏しようとするものにとって考えさせられる点が多いためである。
(14)「古楽とはなにか」 ニコラス・アーノンクール著、1997年、(株)音楽の友社
 著者は、現在バロック音楽のみならずモーツァルトの交響曲やオペラなどにも広範囲に活躍している指揮者で、かなり早い段階でオリジナル楽器によるバロック演奏を手がけており、現在のオリジナル楽器の隆盛には大きな貢献をしたといわれている。
 本書ではほとんどバッハに直接言及している部分は無い。しかし、バロック音楽の基本的な参考書として一読の価値はあると思い紹介する。
 章立ては、第1章「音楽と解釈への基本的考察」、第2章「楽器と言葉」、第3章「ヨーロッパのバロック音楽とモーツァルト」となっており、特に第1章は「記譜法」、「アーティキュレーション」、「テンポ」、「音組織と音程法」(倍音と調律法)等、バロック音楽の楽譜を読む上で念頭においておくべき次項について述べられている。第2章は弦楽器の歴史や、バロック時代のオーケストラ編成等について述べており、第3章は少々断片的にヨーロッパのバロック音楽について幾つかの話題について語られている。
(Bass 百々 隆)

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