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バッハ及びロ短調ミサ曲の
 参考文献(その1)


 微力ながら順次バッハやロ短調ミサ曲に関する事柄を紹介させて頂いていますが、紹介できる範囲は限られており、皆さんの関心のある点も多種多様だと思います。
 そこで、今回は、それぞれが独自にお読みになる際の参考にしていただければと思い、小生がネタにしている資料の概要を紹介します。小生が読んだ物に限られていますので、他にももっと良いものがあると思いますが、入り口としては参考になると思います。バッハに関しての文献は国内版は知れていますが海外では膨大な量の研究論文があり、とても素人の片手間に手におえるものでありません。以下に列挙したのは順不同です。
 また、今回は(その1)とさせて貰いましたが、まだ1年以上続くヴォーチェでのロ短調ミサ曲への取り組み中に新しいものも読めると思いますので、その際に追加したいさせていただこうという趣旨です。

1.バッハに関するもの

(1)「バッハ」(「知の再発見」双書 58)1988年、(株)創元社
歳を追ってカラーの図柄入りで概説されており、生涯の概要を把握するのと当時のイメージを湧かせるのには手頃な解説書。巻末には、家系、手紙、等の資料もまとめられている。ただし、このシリーズは最近余り書店で見かけないので入手は難しいかもしれない。
(2)「バッハ=魂のエバンゲリスト」 磯山雅著、1985年、東京書籍(株)
 現在私が一番参考にしている資料。
 著者の磯山雅(ただしと読む)は東京大学文学部で音楽美学、西洋音楽史を専攻して大学院まで終え、その後ミュンヘン大学に留学して現在は国立音楽大学教授。
 バッハの生涯を年を追って比較的詳しく解説されており、少し詳しくバッハその人と作品を把握するには好適な解説書。
 巻末には作品一覧表があり、簡単な演奏者の評価も加えられている。
(3) 「J.S.バッハ」 磯山雅著 1990年、講談社現代新書
 最も手ごろな入門書。(2)と同一の著者が(2)の5年後に書いたもの。
 時系列的な記述ではなく、著者自身があとがきで書いているように「バッハのさまざまな側面をできるだけ平易に描こうとした」というもので、家系、性格、生活ぶり等の他、演奏家・演奏の紹介もされている。
 最近でも書店でよく見かけるので入手も容易。
(4)「バッハ―伝承の謎を追う」 小林義武著、1995年、(株)春秋社
「バッハ研究の現状」、「演奏習慣の諸問題」、「バッハ復活の背景」、「バッハを巡る偽作の問題」、「フーガの技法の謎」、「晩年のバッハとその作品」、「『ロ短調ミサ曲』のバロック的普遍主義」の7課題について専門的な考察を加えている。
 やや学術的な色彩が強いが、第VI章「晩年のバッハとその作品」、第VII章「『ロ短調ミサ曲』のバロック的普遍主義」が今回取り上げるロ短調ミサ曲に関して述べている他、第II章の「演奏習慣の諸問題」では当時の付点音符、テンポ設定、楽器選定等にふれられており骨のある内容で参考となる点が多い。
(5)「J.S.バッハ」 辻荘一著、1982年改訂版、岩波新書
 新書版なので取り付きやすい。
 著者は一世代前ではあるが日本を代表するバッハ研究家の一人。
 基本的にはバッハの時系列的に要約している。その他にバッハが生まれるまでの社会、宗教、音楽的な状況、バッハの死後、再び演奏会で取り上げられるようになるもでも紹介している。特に前半の時代背景が簡潔に纏められており、参考になる。
(6)「バッハ探求」 樋口隆一著、1993年、(株)春秋社
 著者も現代の日本を代表するバッハ研究家の一人。
 この人も何冊も本を書いているが、磯山氏に比べると学術的な香りの強いものが多く、ややとっつき難いかもしれない。
 この本も、著者が色々な出版物に掲載したり、講演したりしたものが集められており、「バッハ 生涯の軌跡」、「歴史のなかのバッハ」、「バッハ 作品と創造」、「バッハを聴く」、「バッハ研究の現在」の5章に分かれているが、必ずしも時系列的な配列ではないので、関心のある所を深く読むのには良いかもしれない。
(7)「バッハの四季」(平凡社ライブラリー374) 樋口隆一著
 「ドイツ音楽歳時記」(1987年、講談社)の改題。
 遊牧民族である中東地域で誕生したキリスト教が、ヨーロッパで広く広まって行く過程で、ヨーロッパの農耕民族の行事も取り込んで行ったことはよく知られていることだが、現在の教会暦は多分にこのような農耕民族の名残を残している。
 このようなヨーロッパの年中行事と教会暦を紹介しながら、その教会暦にあわせて作曲されたバッハのカンタータや受難曲を紹介している。
 筆者は知らずに「ドイツ音楽歳時記」と「バッハの四季」の両方を買ってしまったが、原題の方が内容と合致しているように思う。
 いずれにせよ、バッハのカンタータが無性に聞きたくなる好著である。
(8)「バッハの思い出」 アンナ・マグダレーナ・バッハ
(実は英国人女性が20世紀に書いたもの)、1967年、(株)ダヴィッド社

 あたかもバッハの二人目の妻のアンナ・マグダレーナ・バッハが書いた手記の体裁を取っている。比較的最近になって本当の著者が明らかになったが、書かれている内容については資料をよく研究されているという評価が与えられている。
 フィクションとはいえ、バッハの人物の雰囲気を類推するには一つのヒント。
 バッハに関する手記的なものとしては、後半生一緒に暮らした親族で、家事手伝いや家庭教師的な役割を果たしたヨーハン・エリーアス・バッハという女性が残した幾つかの手紙が最も資料的価値が高いといわれている。さらに、次男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハが残した「故人略伝」という書物があり、直系の息子なので信憑性がありそうであるが、独り立ちしてからは離れて暮らしているので、内容は検証が必要といわれている。
(9)「バッハへの旅」 加藤浩子著、2000年、東京書籍(株)
 バッハが生涯を過ごした各地の現在の姿を、バッハの生涯を追いながら写真で紹介している。
 300年前の建物、街並みがよく保存されているのには驚かされる。特にバッハが活躍した教会はほとんど当時のものが残っている。こういう本をぼんやりと繰りながら、当時に思いを馳せるとともにバッハの旧跡を巡ってドイツ旅行を企画するのも一興では。
(10)「バロック音楽」 皆川達夫著、1972年、講談社現代新書
 著者はルネッサンス、バロック音楽にかけては現在のわが国では第一人者。この時代の合唱指揮も手がけている。
 この本も新書版であり、入手が容易で数百年にわたる中世からバロックにかけての音楽の歴史が簡潔にまとめられている。
 バッハ、特にロ短調ミサ曲はこの数百年にわたる合唱音楽の集約点といわれており、その分、これらの流れを理解することは有益と思われるので一読を進めたい1書である。
 なお、この著者による「合唱音楽の歴史」という合唱音楽に携わるの者にとってバイブルとも言える好著があるが、何分扱っている範囲が広いのでバッハとロ短調ミサには案外簡単に触れられているだけである。
(11)「バッハ」 アルベルト・シュヴァイツァー著、1955年、岩波書店 他
 著者は、我々が小学生の頃、偉人伝で必ず名前が出てきたあのシュヴァイツァー博士その人。博士はバッハの研究家であるとともに有名なオルガン奏者で、筆者が一生懸命LPを収集していた学生の頃は、博士の演奏したバッハのオルガン全集がでていた。
 この本は20世紀のバッハの研究を抜本的に変え、今日のように幅広く親しまれるようになった契機を作ったといわれるまさに記念碑的著作。ただし、内容は非常に濃く、各々の作品についても具体的な考察を加えているため、曲そのものを知らないと理解できない部分が多い。
筆者も京都の学生時代に購入してから、大阪の他、東京、大飯、青森と単身赴任先にも必ず持って歩いているが読み終われない終生の宿題のようなもの。筆者が持っている岩波書店から出ているものは漢字が旧字体で文章も読みにくいが、白水社からも違った訳のものが出ており、こちらの方が読みやすいという書評もある。

2.ミサ曲およびミサ典礼に関するもの

(1)「ミサ曲 ラテン語・教会音楽 ハンドブック」 三ヶ尻正著、2001年、ショパン出版
 ミサとは何か、ミサ曲の歴史、ラテン語の発音、ミサ通常分の他、代表的な教会音楽の歌詞の対訳、発音がまとめられている。教会音楽の合唱作品を取り上げるものにとって使いやすい実践的な形でまとめられている。
 ロ短調ミサ曲についても6ページ程が割かれており参考になる。これを読まれれば小生の出る幕もうんと減りそう。また、ラテン語の発音も色々あって、そう簡単に決められない、逆にあまり理屈をいわず演奏者が決めるべきものということもご理解いただけると思う。
(2)「音楽史におけるミサ曲」 相良憲昭著、1993年、音楽の友社
 現在、アンサンブル・ヴォーチェのホーム・ページに掲載されて、見ず知らずの人からもアクセスしてもらっている「ミサとレクイエムの構成」を書いた際に参考にした書物の一つ。
 前半はミサの典礼の進め方、意味合いについて解説されており、そもそもミサとはということを理解するのに有益。後半に具体的なミサ曲が作曲家毎に紹介されている。ただし、ロ短調ミサ曲についてはカソリックの典礼のために書かれたものではないということで、ごく簡単に触れられているだけ。

 以上、簡単に紹介したが、とりあえず何から手をつける事を勧めるかと聞かれたら、今の時点の知識からは、バッハについて知るには磯山雅氏の著作に係る2冊のうちの何れか、実践的な参考書としては三ヶ尻正氏のものをお勧めする。
(Bass 百々 隆)

バッハ研究
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